世界初の気候ポジティブ ジンを飲んでみた

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)流行が急速に拡大したスコットランドでは、3月23日の夜にロックダウンの実施が発表されました。学校は閉鎖され、オフィスも原則閉鎖されて在宅勤務に移行。1日1回、1時間程度の運動以外は外出も禁止となりました。スーパーなどの食品店や薬局などを除いて全ての店舗が営業停止となりました。

こういう時は積極的に宅配を利用して地元のメーカーや商店を応援しなくてはというわけで、いろいろ注文してみたのですが、そのひとつがクラフトジン。英国ではここ数年クラフトジンが大ブームですが、スコットランドはクラフトジンのメッカで、ダンディーや周辺地域にもたくさんのクラフトジン蒸留所があります。

そのひとつがアービキー蒸留所。ダンディーから40キロほど北にあります。この蒸留所が、今年初めに環境関連の話題でニュースになっていました。

https://twitter.com/yunod/status/1230801897088593922

世界初の気候ポジティブ・ジンを開発した、という話題でした。商品名のNàdarはゲール語で自然という意味だそう。この話を聞いた時からぜひ飲んでみたいと思っていたので、ちょうど良いとオーダーしてみました。

https://twitter.com/yunod/status/1255064486937067523

Nàdarのカーボンフットプリントはボトル1本当たり-1.54 kg CO2eとマイナス値。製造過程での炭素吸収量が排出量を上回る、カーボンポジティブ製品です。これを実現した秘密は原料にあります。ジンは通常大麦、小麦などの穀類を主原料として作りますが、Nàdarの主原料は豆なのです。

植物が育つためには窒素が必要です。農業では窒素肥料を多量に使うことで収量を高めていますが、窒素肥料の原料である水素の生産に化石燃料が使われています。また、作物が吸収しきれなかった窒素が環境に放出されて、水質汚染や土壌の酸性化、オゾン層の破壊、地球温暖化といった環境問題を引き起こしています。

豆類は、他の作物と異なり根粒菌と共生する性質があります。豆の根に寄生した根粒菌が大気中の窒素を固定して宿主の根に送り込むため、豆類は窒素肥料を入れなくても育ちます。だから、豆を原料にしてジンを作ることで、肥料製造工程から出る炭素排出量が削減できるというわけです。アービキー蒸留所は農場の中にあり、原料を自家生産しています。太陽光発電も利用して炭素排出量を最小限に抑え、醸造かすは家畜の餌や肥料として再利用しています。

このジンを開発したのは、蒸留酒の世界では珍しい女性マスター・ディスティラー(Master Distiller)のカースティ・ブラックさん。アービキー蒸留所での仕事と並行して大学院で豆を使った環境に優しい蒸留酒製造方法を研究し、博士号を取得しています。Nàdarはこの研究の成果なのです。

環境のために良いのはわかったけど肝心の味は?というと、柑橘系の香りが強い個性豊かなジンで、我が家では大好評でした。

https://www.arbikie.com/nadar-gin

 

売れ残りのパンで作ったビール

Dough Boy by Law Brewing Co

 

夫が買い物中、こんなビールを見つけました。Law Brewing CoのDoughBoyという商品です。

Law Brewing Coは地元ダンディーのクラフトビールメーカーのひとつです。Lawは法律のことではなくダンディーの真ん中にある円錐型の丘の名前。スコットランド語でこういう形をした丘や小山をlawと呼ぶため、各地に”○○ Law”があり、ダンディーのものは本来”Dundee Law”という名前なのですが、地元民は単に”the Law”と呼んでいます。

ラベルを飾るDJの絵を見る限り名前はDub Boyに引っ掛けているのですが、なぜdough?と思ってよく見ると、下に小さく”bread beer”と書いてあります。そう言えばラベルに描かれているのもヘッドフォンではなくてパン…?

 

 

裏側のラベルを見ると、「リサイクリングと廃棄物削減を促進するため、Clark’s Bakeryの売れ残りパンを使って作りました」と書いてあります。パンは賞味期限が短い商品なので、毎日全国で大量の売れ残りが出て廃棄物となっています。それを再利用してしまおうという試みなのでした。そういえばClark’s Bakeryのパン工場はLaw Brewingの醸造所から歩いて約5分ほどの距離にあり、理想的なパートナーです。

英国の「パンで作ったビール」と言えば、元祖はロンドンで2015年に立ち上げられたToastです。ベルギーのBeer Projectが作ったBabyloneというビールに触発されたとのことで、ノースヨークシャーのクラフトビールメーカーWoldTop Breweryが醸造し、Toastのブランド名で販売されています。

サーキュラーエコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団によると、英国で生産されるパンのなんと44%は廃棄されてしまっているのだそう。これを再利用できれば廃棄物削減には大きな

しかし、Toastは自社ブランドでビールを売るだけではなく、英国全国に売れ残りパンでビールを作る運動を広げたいと、パンを使って作るビールのレシピを公開。これを参考にして、あちこちのビールメーカーが売れ残りパンビールを作るようになっています。Law Breweryもそうした醸造所のひとつというわけでした。

小規模なクラフトビールメーカーだけではなく、大企業の参入も始まっています。例えば、小売大手のマークス&スペンサー( M&S)は2018年にUsed Our Loafという名前でパンのビールを販売(M&Sのパンを使っているそう。製造はAdnams社)しました。また、大手パンメーカーのWarburtonsは、Toastと提携して規格外で販売できないクランペットを原料にしたビールを発売しています。

 

スコットランドで自動運転バスの試運転

スコットランドで来年から始まる自動運転バス運行計画を前に、これに使用されるバスがグラスゴーで開催されているコネクテッド自動運転車 (CAV: Connected and Autonomous Vehicles)サミット会場でお披露目されました。

この試運転では駐車場の一角を仕切ってバスを走らせましたが、2020年末までに5台の自動運転車両を路線バスとして導入する計画とのこと。フォース湾にかかる道路橋を渡るルートで、エディンバラ空港に近いエディンバラ・パーク駅と、フォース湾を挟んだ対岸のパーク&ライド駐車場間を結びます。

フォース湾にかかる道路橋は現在2つあり、その片方。バス車線として使われていて一般車両は入らないので、実験的導入にはもってこいのルート。

自動運転車両とは言ってもかならずドライバーが乗車して、万一の時に手動で運転できるようにするとのことです。

スコティッシュパワー社、発電事業の脱炭素化を達成

2018年10月16日、英国の大手電力会社スコティッシュパワー社は、発電事業の100%グリーンエネルギー転換を達成したと発表しました。

英国では1990年にそれまで国有だった電力事業が民営化され、電力市場が始まりました。発電・送電・配電(小売)がそれぞれ民間企業として地域ごとに分割され、1社が全国の送電を担い、発電と小売は元国有企業に加えて新規事業者が市場に参入する一方、合併・買収による統合も進み、欧州資本も入ってきました。また、並行して進められたガス市場の自由化により、電気・ガスの両方を供給する統合エネルギー企業が大半となっています。大小合わせて50を超える企業がひしめく小売市場では、全国どこに住んでいても自由に供給会社を選択できる仕組みで、供給会社を変えるのも簡単です。とはいえ、市場シェアの大部分は、1990年の民営化で誕生した企業をルーツに持つ6社(通称Big Six)の寡占となっています。

スコティッシュパワー社はこのビッグ6のひとつ。名前からわかる通りスコットランド南半分を担当していた国有配電事業者が民営化されて生まれた企業で、現在はスペインのイベルドローラ・グループの傘下にあり、英国のエネルギー小売市場第4位。また、スコットランドにいくつもの発電施設を所有しています。

スコティッシュパワーはスコットランド自治政府の意欲的な脱炭素政策を受けて、これまで順次発電のグリーン化を進めていました。大規模なウィンドファームを建設する一方で、2016年には石炭火力発電所を閉鎖、そして今回ガス火力発電所をまとめて売却し、発電を水力・風力のみに集約して、100%再生可能電力への転換を達成したわけです。

小規模事業者の中には以前から再生可能電力100%を売りにしている企業はありましたが、今回初めてビッグ6企業が脱炭素化を達成したということで注目を浴びています。

また2018年11月5日には、交通・輸送の脱炭素化を促進するサービスとして、再エネ発電で供給された電気で電気自動車(EV)を充電する、家庭用「再エネEV充電パッケージ」の販売も開始しました。

BrewGooder: ビールを飲んで水を贈ろう

今朝、小包が届きました。

何も注文した覚えはないのになんだろうと首をかしげながら開けてみたら、出てきたのがこれ。

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そういえば、春先に目にとまった「ソーシャルバイトの設立者が今度はチャリティ支援ビールのプロジェクトを始動、現在クラウドファンディングで資金集めを開始」というニュース記事を見て、面白い着想だと感心して10ポンド出資していたのでした。すっかり忘れていたのですが、出資者特典として完成したビールが送られてくることになっていたのです。

このチャリティビール・BrewGooderのスローガンは”Drink Beer, Give Water”(ビールを飲んで水を贈ろう)。

ビールを売って得た利益の100%を、世界の貧困地域で安全な飲み水へのアクセス整備活動を行っているチャリティに寄付することを目的にした、非営利の社会企業なのです。そういえば、前述の記事の日付は2016年3月22日。世界水の日でした。

国連によると世界の40%の人が水不足の影響を受けており、地球温暖化の影響で今後さらに悪化することが予想されています。そのため、国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、目標6を「安全な水とトイレをみんなに:すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」としています。

BrewGooderのビールは、その名も”Clean Water Lager”。ピルスナータイプの爽やかで飲みやすいビールです。製造元はスコットランドのパンクなクラフトビールメーカー、BrewDog(ブリュードッグ)。日本にも輸出していてクラフトビール専門店等で買える他、六本木(日本のサルサの聖地?サルサ・カリベのすぐ近く)にバーを出店しており、日本にもファンのいるメーカーです。英国各地のBrewDog店舗では、BrewGooderをドラフトで提供しているとのこと。今後取扱い店も徐々に増えていくと思いますので、もし見かけたらぜひ飲んでみてください。

男女均等議会への道は遠かった

2016年5月5日(木)はスコットランド議会選挙でした。

2014年9月のスコットランド独立投票の後辞任したアレックス・サーモンド(Alex Salmond)に代わってスコットランド国民党(SNP: Scottish National Party)党首・スコットランド首相に就任したニコラ・スタージョン(Nicola Sturgeon)は自他共に認めるフェミニスト。スコットランド初の女性首相として男女同数の内閣を率い、公共団体理事会の男女同数化を推進するなど、ジェンダー平等推進に取り組んできました。

女性リーダーを戴くのは与党SNPだけではありません。野党第一党の労働党は2015年から、第二党の保守党は2011年から女性が党首。三大政党の党首に加えて議長も2011年以来女性と、スコットランド議会では女性の活躍が目立っていました。今回の選挙でも、スタージョン首相は政治のジェンダー平等を目指すWomen 50:50キャンペーンに賛同し、議員の男女同数化に取り組むことを広く呼びかけていました。

ところが、蓋を開けてみると、期待とはうらはらに女性議員の比率は35%という残念な結果。女性議員が非常に少ない日本から見ると、1/3以上が女性議員という数字は大きく見えますが、前回(2011年選挙)も女性比率が35%だったので、努力にもかかわらずまったく増えなかったということになります。スコットランド議会では1999年の初回選挙で女性比率が37%、2003年には40%に達した過去があるので、意識的に取り組んだにもかかわらずこんな数字になってしまったのは、逆に驚きでした。なぜこんなことになったのでしょうか。

与党SNPは、候補者の女性比率を40%台に引き上げて選挙に臨みました。50%にできなかったのは再選を狙う現職議員が男性多数だったためですが、新人が出馬する選挙区についてはすべて女性候補を立て、女性議員比率を前回の28%から43%へと、大きく引き上げることができました。

それでも全体として女性議員比率が上がらなかった最大の要因は、保守党の大躍進と労働党の不振でした。労働党は1990年代から女性議員数拡大に取り組んできた実績があり、前回の選挙でも議員の女性比率は46%に達していました。今回もこの比率を維持したのですが、議席を大きく減らして野党第二党に転落してしまったため、女性議員数も減ってしまったのです。一方、議席倍増を果たした保守党はクオータ制に反対しており、今回の選挙では唯一、候補者選びの際に男女比にまったく配慮しなかった政党でした。候補者の女性比率は19%と低く、比例代表リストでも筆頭はほとんどが男性候補。男性100%のリストで戦った選挙区すらありました。最も大きく躍進した政党の女性比率がこれだけ低ければ、当然全体の足を引っ張ってしまいます。

しかし、最も失望が大きかったのは緑の党でした。男女同数化に賛同し、比例代表リストで候補を男女交互に並べる「ジッパー制」を採用し、さらにリストの半数は女性を筆頭に立てて選挙に臨んだのですが、議席を大きく増やして野党第三党になったにもかかわらず、当選者6人のうち女性議員は1人だけ。女性を筆頭にしたリストで戦った選挙区のほとんどでは、議席獲得を果たせなかったのです。この緑の党の結果を見ると、クオータ制も機械的に導入するだけでは不十分であり、勝てる見込みの高い選挙区に女性を配置する戦略的なアプローチが必要であることがわかります。